高音質ハイレゾ名盤

2017年7月21日

最高の指揮者と楽団による贅沢な録音!

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スペインのフラメンコがオーケストラから弾けるよう
シャブリエ:狂詩曲(ラプソディ)「スペイン」
アーサー・フィードラー指揮/ボストン・ポップス管弦楽団

今回、ご紹介するのはエマニュエル・シャブリエ(1841~1894年・フランス)の狂詩曲(ラプソディ)「スペイン」(アルバム『Hi-Fiフィードラー』トラック7)である。

シャブリエは父親から促され仏・内務省の役人となるが、39歳のときに一念発起、辞表を叩き付け役人という安定した職を捨てる。そして妻を伴って、長年の念願だったスペインへの旅に出る。彼にとって2ヶ月にもわたるスペイン旅行は、何も、スペインの太陽や美味しい食べ物だけではなかった。パリに戻った彼は、オーケストラの曲を書くことになった。

狂詩曲(ラプソディ)とは、自由奔放な形式の音楽のこと。浮き立つようなリズムとメロディーは、何度も繰り返して聴きたくなり、しまいには踊り出したくなってくる。

スペインの踊りといえば、連想されるのが、フラメンコ。フラメンコの中には3連符が4つ続いた4拍子のタンゴのリズムや、ゆっくりとしたファンタンゴと呼ばれる12拍子の昔からある踊りなどがある。本曲をよくよく聴いてみると、3拍子のリズムがいくつも連なって2拍子のように前へ前へと飛翔して聴き手をドキドキワクワクさせるのに気づかされる。つまり、狂詩曲「スペイン」は、シャブリエ流の「フラメンコ」のリズムの曲なのである。

ハイレゾでの聴き所は、6分22秒全編にわたって繰り広げられる一大ページェントのようないろいろな楽器が出てきては引っ込み、ほかの楽器がまた出てくるといったところにある。たとえば、冒頭から弦楽器がはじくピチカートにのって木管楽器、金管楽器が登場。弦楽器はさしずめフラメンコのダンサーのようだ。次々にところを変えながら、まるで踊っているように動き回る。0:47から全部の楽器が勇ましく踊り、ホルンやトランペットのファンファーレとともに、木管楽器ファゴットが動き回り、2:06からは弦楽器が優雅な舞をみせ、今度はまた金管楽器が咆哮するかと思うと、バスドラムがドーンと景気をつけるといった具合にどんどんとクライマックスに向かっていく。

演奏しているのは、アメリカの良き時代を代表するアーサー・フィードラー指揮/ボストン・ポップス管弦楽団。ボストン・ポップス管弦楽団とは、ボストンの名オーケストラであるボストン交響楽団が、軽い作品を演奏するときの呼称である。

指揮者アーサー・フィードラー(1894~1979年)は、アルバム『Hi-Fiフィードラー』のジャケットの真ん中に座るその人。1930年から79年までボストン・ポップスの常任指揮者を務めている。ちなみに後任は、映画『スター・ウォーズ』の音楽で有名なジョン・ウイリアムズ(1932年~)が1980から1993年まで務めた。

アメリカの自動車・パッカードに代表される古き良きアメリカを感じさせるようなゴージャスなサウンドは見事で、豪華絢爛なオーケストラを支える弦楽器群、力強さと煌びやかさを誇る金管楽器群、名人揃いの木管楽器群と絶妙。贅沢にオーケストラ・サウンドを収めているので、古さを感じさせないばかりか、心沸き立つメロディーの数々である。

本アルバムは、旧RCA(ラジオ・コーポレーション・オブ・アメリカ)社の「リビング・ステレオ」シリーズの中の1枚である。「リビング・ステレオ」とは、「家に居ながらにしてコンサート会場の雰囲気を味わう」というキャッチ・フレーズのもと、最高の指揮者と楽団が贅沢な録音をしたことで知られている。『Hi-Fiフィードラー』は1956年から1960年にかけて音響の素晴らしいことで有名なアメリカ・ボストン・シンフォニーホールで3チャンネルで録音された。本曲は、1958年1月26日の録音。旧RCAの「リビング・ステレオ」シリーズは全部で54タイトル制作されたが、2004~07年にかけて、ボストンにあるサウンド・ミラー社で入念なハイレゾ化がなされ、細かな楽器間のやりとりやニュアンスが甦った。

アルバムには、本曲のほか、R.コルサコフの歌劇「金鶏」組曲、ロッシーニの歌劇「ウイリアム・テル」序曲、チャイコフスキーの「スラブ行進曲」、ベルリオーズの「ラコッツィ行進曲」など、誰もが親しめるような豊かでふくよかなサウンドが目白押しである。

シャブリエの狂詩曲「スペイン」に戻る。スペイン産のドライ・シェリーをソーダで割ったカクテル・レブヒートでからからになった喉の乾きを潤しつつ、この曲を聴けば、燦々と降り注ぐ太陽、心はもうスペインである。

 

 

(文/野村和寿)

雑誌編集者を長くつとめ、現在は校閲者。1975年にカール・ベーム指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団日本公演のブラームス交響曲第1番の最終楽章で、鳥肌が立ち、帰り道をさまよった経験を持つ。爾来、クラシックを生涯の友として過ごしてきた。編集者時代、クラシック以外のロックやジャズといったジャンルのアーティストと交流を深めるうちに、クラシックと、楽しさにおいて何も変わらないことに確信を持つ。以来、ジャンルを取り払って、SP盤からハイレゾまで、未知なる音の発見の喜びを日々捜している。また無類の古いカメラ好きでもあり、特にドイツの光学製品に魅せられ、ライカとそのレンズの蒐集に執念を燃やしている。

 

 

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