高音質ハイレゾ名盤

2017年7月12日

レアな音源も多数収録した35曲入り豪華版

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プリンスのプロデューサー&エンジニアとしての才能を再発見、音楽面だけでなくオーディオ面でも革命的!
プリンス『パープル・レイン DELUXE-EXPANDED EDITION』

プリンスが57歳の若さでこの世を去って1年以上過ぎた。お互いはそう思っていなかっただろうが、ひと足先に旅立ったマイケル・ジャクソンとプリンスは、良きライバルだったと思う。このふたりは、1970年代末から1980年代のブラック・ミュージックを変革した。ふたりが出現して、メガヒットを生まなかったら音楽シーンのその後は随分と異なった形になったろう。アフロ・アメリカンと音楽マニア中心に愛されていたブラック・ミュージックの人種の壁、ジャンルの壁を破壊したのは、このふたりの功績だったと思う。

数年に1枚しかアルバムを発表しないマイケル・ジャクソンに対して、プリンスは次々とアルバムを制作し続けた。ヒットするとか話題になるということは、プリンス本人にはあまり関係なかった。文章を書く者が、作家がものを書かないと生きられず、世界と関係性を築けないように、プリンスも音楽を生み出していないと世界と自己の調和がとれない根っからのクリエイターだったのだ。敬愛するレイモンド・チャンドラーは、作家という人種は、書こうが書けまいが1日に4時間は、ただ机に向かって文章と向きあえる人だと言うようなことを生前、語っていた。プリンスも毎日の生活の中に音楽が無ければ生きられない人種だったのだろう。

日本でのデビュー作となったセカンド・アルバム『愛のペガサス』を1979年に聴いた時、スティーヴィー・ワンダー以来のマルチプル・クリエイションができる天才が出現したと受け止めた。ぼくやブラック・ミュージックを愛する音楽ファンの予感は当たり、1984年の本作『パープル・レイン』でプリンスは世界的名声を得た。

同時に公開された同名映画は、アカデミー賞も受ける空前の大ヒットとなった。この映画が公開された時、ニューヨークの映画館で2度観た。そこに繰り広げられた光景は、いわゆる人が映画を観るというスタイルとかなり異なっていた。客は映画に合わせて踊り、声を合わせて叫ぶ。まるでプリンスのライヴに出かけたようなノリだった。ぼくはプリンスがザ・ビートルズを敬愛していたと信じているが、『パープル・レイン』を映画と連動させたのは、かつてザ・ビートルズが音楽と映画を合体させたことからイマジネーションを得たのだろう。

プリンスのサウンドは彼が生まれ育ち、音楽基地としたミネアポリスの名から、“ミネアポリス・ファンク”と呼ばれた。音場感たっぷりでやや湿度感あるドラムスの音、空間に広がっていくイメージのギター・ソロの音色、時にエコー感を強調したヴォーカル録音など多彩な特徴を持っている。プロデューサーとしてはもちろん、エンジニアとしても高い才能を持っていたプリンスは、音楽だけでなくオーディオ的にも唯一無二と呼べる自己のサウンドを確立していた。

ハイレゾ音源は2015年のリマスターが使われているが、CDに比べて、プロデューサー&エンジニアとしてのプリンスの意図がより明確に伝わってくる。タイトル曲「パープル・レイン」の深みのある音響感は、オリジナルCDでは隠れ気味だった、この曲の持っている感情=プリンスの感性をしっかりと聴かせてくれる。『パープル・レイン』というアルバムが、音楽面だけでなく、オーディオ面でも、それまでのブラック・ミュージックと一線を画した革命的なサウンドだったことを2015年リマスターのハイレゾ音源は教えてくれた。このアルバムが歴史に残る大ヒット作にして名作であると同時に、オーディオ的にもいかに優れていたか、ハイレゾ音源で聴き直してわかった。

オリジナル・アルバムは9曲入りだったが、ハイレゾ音源のEXPANDED EDITIONは35曲入り。今では貴重な7インチ・ヴァージョン、12インチ・ヴァージョンなどが26曲も収められていて、『パープル・レイン』の完璧なアーカイヴ集となっているのも嬉しい。

 

 

(文/岩田由記夫)

東京生まれ。ピンクタンク代表取締役。音楽、オーディオ評論家、音楽プロデューサー、DJなど。6歳でエルビス・プレスリーの「ハートブレイクホテル」に影響を受ける。1970年になると講談社の記者を経て、週間プレイボーイ、FMレコパル、ミュージックライフなどに執筆。FM&AM局の制作プロデュースやDJ、そしてレコード会社の経営アドバイザーも務める。また1980年代に入るとFM東京、ラジオニッポン、NHKなどでDJとして活躍。さらにCDや映像の製作までこなす多彩ぶり。現在はbayfm「ミュージック・インシュランス」(オンエアー日/毎週日曜日、午後11時00分より)を担当。主な著書に「僕が出会った素晴らしきミュージシャンたち」「フォーク」などがある。

 

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