高音質ハイレゾ名盤

2017年5月31日

初来日公演を収録した伝説のライヴアルバム

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まだおとなしかった日本の観客が総立ちになった白熱のライヴ!
サンタナ『ロータスの伝説 完全版』

ぼくが動くサンタナを初めて観たのは、1969年に開催されたウッドストック・フェスティヴァルの映画『ウッドストック』で演奏された「ソウル・サクリファイス」だった。まだ20代前半だったカルロス・サンタナのギター、マイク・シュリーヴのドラムスとホセ・チェピート・アリアスのパーカッションが生むグルーヴに圧倒された。このライヴの成功は、サンタナを一躍スーパースターの座に押し上げた。1969年にリリースされたデビュー・アルバムは、この成功により、全米アルバム・チャート4位、100万枚オーヴァーのセールスをあげた。

1947年、メキシコ生まれのカルロス・サンタナがサンタナ・ブルーズ・バンドを組んだのは、まだ10代、1966年のことだ。1967年フィルモアで演奏しているところをオーナーのビル・グレアムに認められた。サウンドもブルーズからラテン・ロックに変化させた。ウッドストック・フェスティヴァルの企画者のひとり、マイケル・ラングに売り込んだのは、ビル・グレアムだった。そのライヴで聴衆を圧倒。たった1曲、映画に収められた「ソウル・サクリファイス」によって全世界の音楽ファンは、当時、圧倒的に新鮮だったラテン・ロックの虜になった。

そんなサンタナの初来日は1973年6月~7月にかけてだった。1分間の黙祷から始まったライヴは今でもはっきりと覚えている。黙祷が終ると同時にライヴが始まったのだが、7人と思い込んでいたメンバーは8人だった。カルロス・サンタナは、ニュー・サンタナのためにシンガーを捜していて、来日直前に決まったのが8人目のメンバー、レオン・トーマスだったのだ。

日本のファンは世界で初めてニュー・サンタナ・バンドを観られたことになる。演奏は2時間以上続いた。当時のサンタナは1972年に発表した名作『キャラバンサライ』でインストゥルメンタル中心のジャズっぽい作風に変化していたが、ライヴはラテン・ロックのグルーヴそのものだった。現在と比べると当時の聴衆は、1曲目から総立ちになるようなノリではなく、日本の音楽ファンは音楽をじっくりと聴いておとなしいと言われていた。そんな大人しいファンを総立ちにさせてしまうパワーをサンタナはライヴで見せてくれた。

日本でのライヴのうち、7月3、4日の大阪公演がレコーディングされ、それが3枚組LPとして発売された本作『ロータスの伝説』となった。4チャンネル録音、44年前の日本人スタッフは世界に誇れる技術力を示した。

ジャケットは、横尾忠則が手がけ、有名な22面体で構成された。1970年代初期から中期、ある関係で横尾さんと親しくさせて頂いていた。ぼくが自分で発見し、プロデュースにも参加したある天才ギタリストのジャケット制作を横尾さんにお願いした時、『ロータスの伝説』について話をうかがった。22面体はサンタナの音楽の広がり、開放感からイメージされ、ギャランティはウン万円(43年前の金額としては凄い!)だったと教えて頂いた。

今年4月下旬の来日に合わせて、『ロータスの伝説(完全版)』が、CD/SACDのハイブリッド及びハイレゾ音源で再リリースされた。新発売に際して、DSD11.2MHzマスタリングによる2017年リマスタリングが採用された(e-onkyoで入手可能。moraは2.8MHz/1bit)。このSACDとハイレゾ音源の音の差はほとんどない。4ch録音と思えない音の分離の良さは、いかに43年前の日本の技術力が高かったかが伝わる。

2006年に再発売されたCDと比べるとハイレゾ化はもちろん、デジタル技術による再生能力の進化を感じる。ひとつひとつの音に深味とキレが加わっただけでなく、ライヴ会場の音場感がSACD、ハイレゾ音源だとこれまでどのメディアよりも熱く伝わってくる。オリジナル・アナログLPを高級なプレイヤーで再生した音とほぼ同音質の再生音を簡単にハイレゾ音源から得られる。そのライヴの熱はまったく冷めていない。

 

(文/岩田由記夫)

東京生まれ。ピンクタンク代表取締役。音楽、オーディオ評論家、音楽プロデューサー、DJなど。6歳でエルビス・プレスリーの「ハートブレイクホテル」に影響を受ける。1970年になると講談社の記者を経て、週間プレイボーイ、FMレコパル、ミュージックライフなどに執筆。FM&AM局の制作プロデュースやDJ、そしてレコード会社の経営アドバイザーも務める。また1980年代に入るとFM東京、ラジオニッポン、NHKなどでDJとして活躍。さらにCDや映像の製作までこなす多彩ぶり。現在はbayfm「ミュージック・インシュランス」(オンエアー日/毎週日曜日、午後11時00分より)を担当。主な著書に「僕が出会った素晴らしきミュージシャンたち」「フォーク」などがある。

 

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