高音質ハイレゾ名盤

2017年5月24日

聴き始めてすぐに鳥肌が立つほどの良音!

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恩人トミー・リピューマをプロデューサーに迎えた完全なるジャズ・スタンダード・アルバム
ダイアナ・クラール『ターン・アップ・ザ・クワイエット』

1曲目、「ライク・サムワン・イン・ラヴ」のクリスチャン・マクブライドが弾くアコースティック・ベース、それに続くダイアナ・クラールのヴォーカルを聴いただけで鳥肌が立つ良録音だとわかる。女性ヴォーカル及びジャズ・スタンダードを好むオーディオ・ファンにとっては、愛機のリファレンス・ディスクにしたい良音だ。

ソロでも人気のあるマーク・リボーがギターを弾く「ムーングロウ」では、ミュージシャン同士の心の対話が音から感じとれる。日本ではトリオ・ロス・パンチョスがヒットさせた「キエン・セラ?」の英語ヴァージョン「スウェイ」。陽気にセクシーに歌われることの多いこの曲をダイアナ・クラールは、“ターン・アップ・ザ・クワイエット”、夜のムードにしっとりとアレンジし、歌う。

CDはSHM-CDで十分に音が良いのだが、ハイレゾ音源には、より一層温かみと音場の豊かさがある。ステフォン・ハリスの演奏する「ロマンティックじゃない?」のヴィブラフォンや高音域で使われる弦は、ハイレゾ音源の方がより音楽に密着したムードを伝えてくる。CDの出来がいいので安価なシステムだと大きな違いを見つけにくいかも知れないが、ある程度のシステム、より大型のスピーカーで聴くとハイレゾとの音質差は歴然としている。

プロデュースは今年3月に逝去したトミー・リピューマ。前々作『グラッド・ラグ・ドール』ではアメリカーナのトップ・プロデューサーのひとり、T・ボーン・バーネット、前作『ウォールフラワー』では大御所デイヴィッド・フォスターをプロデューサーに選んだダイアナ・クラールだが、今作では80歳を超えて隠居状態だったトミー・リピューマをスタジオに連れてきた。

マイルス・デイヴィス、ジョージ・ベンソン、マイケル・フランクス、ポール・マッカートニーなど数々の名作をジャズ、フュージョン、AOR、スタンダード・シーンで生んだトミー・リピューマは、ダイアナ・クラールの強烈な支持者であった。1995年、メジャー・デビューしてから発表したすべてのアルバムを全米ジャズ・アルバム・チャートでNo.1にしている記録を持つダイアナ・クラールだが、元々はカナダのインディペンデント・シンガー/ピアニストだった。メジャー・デビュー以前の1993年、カナダで発表した『ステッピング・アウト』を聴き、彼女をメジャー・デビューさせるのに貢献した。彼女自身も“トミー・リピューマがいなかったら、今の私は影も形もない”と語っている。

そのトミー・リピューマと最後の仕事をしたがったひとつの理由は、約11年振りに本作を完全なジャズ・スタンダード・アルバムにしたかったからでもあろう。トミー・リピューマと組んだのは約8年振り。ポール・マッカートニーが2012年に発表したスタンダード・アルバムを彼が手掛けたことにも大いに関係がある。

いつも通りのダイアナ・クラールのヴォーカルに加えて、前述のクリスチャン・マクブライド、マーク・リボー以外にもベースにジョン・クレイトン、ギターにラッセル・マローン、ドラムスにジェフ・ハミルトン、カリーム・リギンス、弦アレンジにアラン・ブロードベントなど超一流が揃っている。しかし大編成で演奏される曲は無く、1曲の楽器数は少なく絞られている。これが良音を生んだ秘密のひとつであり、ダイアナ・クラール以外の演奏者の顔も良く見える因となっている。

 もうひとつ、良音に仕上がったのは、トミー・リピューマと長くコンビを組んできた名エンジニア、アル・シュミットを起用したことにもよる。オフコースや松任谷由実などとの仕事で知られるこの名匠は、最近ではボブ・ディランのスタンダード・シリーズを手掛けるなどスタンダード録音のNo.1エンジニアだ。

 

 

(文/岩田由記夫)

東京生まれ。ピンクタンク代表取締役。音楽、オーディオ評論家、音楽プロデューサー、DJなど。6歳でエルビス・プレスリーの「ハートブレイクホテル」に影響を受ける。1970年になると講談社の記者を経て、週間プレイボーイ、FMレコパル、ミュージックライフなどに執筆。FM&AM局の制作プロデュースやDJ、そしてレコード会社の経営アドバイザーも務める。また1980年代に入るとFM東京、ラジオニッポン、NHKなどでDJとして活躍。さらにCDや映像の製作までこなす多彩ぶり。現在はbayfm「ミュージック・インシュランス」(オンエアー日/毎週日曜日、午後11時00分より)を担当。主な著書に「僕が出会った素晴らしきミュージシャンたち」「フォーク」などがある。

 

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