高音質ハイレゾ名盤

2017年5月19日

『四季』を世に広めた大ロングセラーの名演

Theme Tag


uml00028948271467 

春・夏・秋・冬をバイオリンが音楽に変えた!
『ビバルディ:四季』 演奏:イ・ムジチ合奏団 独奏バイオリン:フェリックス・アーヨ

ビバルディの『四季』、それもイ・ムジチ合奏団の演奏するハイレゾ版を、満を持してご紹介しようと思う。クラシックのなかで、この曲ほど広く知られている曲はおそらくないに違いない。もちろん、なにかをしながら『四季』を楽しむのもよいが、今回は、もう少し深く知るためのコツをご紹介する。

『四季』はもともと、それぞれが3つの楽章から成る春・夏・秋・冬の、合計12楽章から成る4曲のことである。アントニオ・ルーチョ・ビバルディ(1678~1741年・ベネチア共和国・現在のイタリア)が1725年に作曲した「和声と創意の試み」作品8 の中に含まれているバイオリン協奏曲。

作曲家のビバルディがこの『四季』を作曲した年である1725年は、バッハは存命中、モーツァルトの生まれる31年前、ベートーベンが生まれる45年前のこと。バロックと後年呼ばれる頃だったので、今ではバロック音楽の1つとして知られている。

まだ弦楽器が登場したばかりで、有名なクレモナのバイオリン製作者アントニオ・ストラディバリ(1644~1737年)が、存命中であり、活躍していた頃のことだ。故郷・北イタリアのアドリア海に面する水の都ベネチアで活躍していたビバルディは、バイオリンのもつ可能性を引き出そうとして、本曲を作曲したのではないか。そう思えるところが本曲にはたくさんある。

この曲には、楽譜とともに14行から成る当時ヨーロッパで流行していたソネットと呼ばれる詩が付属している。この曲を弾くときの参考にしてほしいと、ビバルディは考えていたのかもしれない(ビバルディ本人がこのソネットを書いたかどうかは、はっきりとはわかっていない。しかしビバルディが書いたと思いたくなるように曲とぴったりと合っている)。

キーワードを拾ってみると、春には「うれしそうな小鳥のさえずり、風が柔らかにそよぐ、小川の流れ、犬の鳴き声、時として嵐、嵐の過ぎ去った後の小鳥の鳴き声、犬の遠吠え」などなど、春が来た喜びを。夏には「焼けつく太陽、かっこうの鳴き声、北風、ちいさな蝿、そして稲妻が轟く雷雨」など、不安におののく農民の様子が描かれる。秋には「村人たちの踊り」が描かれる。「豊かな収穫、お酒に酔い眠りこける農民たち」、狩りにでかけ、「鉄砲と狩猟犬」が登場する。そして、冬には「冷たい雪が降りしきるなか、ガチガチに凍えながら歩く人々。寒さの中での足踏み、外は北風が吹き、雨が降る」。家に入ると打って変わって「暖かな室内、火のかたわらで静かで満ち足りた日々」といった農民たちの生活が描かれている。

これらのストーリーを奏でるのが独奏バイオリンをはじめとする弦楽器群である。よくご存じの『四季』を、春・夏・秋・冬の上記のようなキーワードから、音楽に込められた情景や様子を想像しながら聴いてみるのも一興である。

演奏は、イ・ムジチ合奏団。その名は「音楽家たち」を意味するイタリア語である。本曲は1959年のイ・ムジチ合奏団による録音がきっかけで、有名になったといってよい。1995年には彼らの『四季』のレコードは全世界で250万枚のセールスを記録して、いまでも記録を更新し続けている。

イ・ムジチ合奏団はローマのサンタ・チェチーリア音楽院出身のバイオリン6、ビオラ2、チェロ2、コントラバス1、チェンバロ1という12名の卒業生たちによって結成された。奇しくも、ビバルディの『四季』も12の楽章から成っていて、12という数字が付合している。本曲でバイオリンのソロを弾くのは、スペイン出身のバイオリニストで、イ・ムジチ合奏団の初代リーダーだったフェリックス・アーヨ(1933年~)。ビバルディとほぼ同時代のバイオリン、ガダニーニ1744年製のバイオリンを用いて演奏している。

ハイレゾで『四季』を聴いてみると、改めて春・夏・秋・冬の情景が浮かんでくる。「春」の第1楽章(トラック1)では、独奏バイオリンがさわやかに駆け抜けるようで、春が来たうきうきした喜びが伝わってくる。「夏」の第3楽章(トラック6)では、一転して空がかき曇ったかと思うと激しい雷雨が襲ってくる。弦楽器群はその迫真の動きをみせ、生き生きと伝えてくる。「秋」の第1楽章(トラック7)では、ハイレゾのもつ混じり気のない音のつながりのゆるやかな感じが、ほのぼのとした秋の収穫の宴を演出してくれるかのようだ。

独奏バイオリンのアーヨが演奏した1959年当時、楽器であるバイオリン・ガダニーニは、既にこの世に生まれて215年も経過していた。イタリアに脈々と受け継がれてきたバイオリンの伝統が感じられる、華やかでどこまでも美しい調べは必聴である。

バイオリンという完成したばかりの楽器は、こうして、世の中に知られるようになり、今でも演奏楽器の中心にある。もしかすると、ビバルディはバイオリンをこの世に残すために、『四季』を作曲したのかもしれない。

 

 

(文/野村和寿)

雑誌編集者を長くつとめ、現在は校閲者。1975年にカール・ベーム指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団日本公演のブラームス交響曲第1番の最終楽章で、鳥肌が立ち、帰り道をさまよった経験を持つ。爾来、クラシックを生涯の友として過ごしてきた。編集者時代、クラシック以外のロックやジャズといったジャンルのアーティストと交流を深めるうちに、クラシックと、楽しさにおいて何も変わらないことに確信を持つ。以来、ジャンルを取り払って、SP盤からハイレゾまで、未知なる音の発見の喜びを日々捜している。また無類の古いカメラ好きでもあり、特にドイツの光学製品に魅せられ、ライカとそのレンズの蒐集に執念を燃やしている。

 

 

e-onkyo_logo

のページへ

mora_logo

のページへ

 

関連記事

WPCR000080270_R_thumb

クラプトンと敬愛するB.B.キングとの共演作

2017年9月20日

UCCG-51096-H1-2

モーツァルトが最後に到達した「涙の日」

2017年9月15日

5.0.2 JP

9/27に遺作が発売されるL.ラッセルの3作目

2017年9月13日

ラナ・テ゛ル・レイ UICS-1324 ラスト・フォー・ライフ_thmub

生きることへの欲求を歌ったメジャー4作目

2017年9月6日

Book

第36巻好評発売中!

隔週刊CDつきマガジン

JAZZ VOCAL COLLECTION

BUY

牧野良幸のハイレゾのすゝめ