高音質ハイレゾ名盤

2017年5月17日

ブルーグラス界の女王18年ぶりのソロ作

Theme Tag


UCCQ20021960年代の空気感、アコースティックの温かい音色には何ともいえない味わいがある
アリソン・クラウス『ウィンディ・シティ』

2007年にリリースされたロバート・プラント(レッド・ツェッペリン)とコラボレーションした『レイジング・サンド』は大ヒットとなり、“アルバム・オブ・ジ・イヤー”、“レコード・オブ・ジ・イヤー”など5部門のグラミー賞を獲得した。日本で一部のカントリー/ブルー・グラス・ファンを除いて無名に等しかったアリソン・クラウスの名は、音楽ファンにも広く知られるようになった。

1971年7月23日、シカゴ=ウィンディ・シティから約300km離れたディケーターという町で生まれたアリソン・クラウスは、天才少女だった。5歳でクラシックのヴァイオリンを習い始めたが、すぐにブルーグラスのフィドル(ヴァイオリン)に夢中になり、8歳でライヴを始め、13歳の時にフィドル・コンテストで優勝。後に活動を共にするユニオン・ステーションのダン・ティミンスキーとはこの当時に出逢っている。

1987年、16歳の年にラウンダー・レコーズから『トゥー・レイト・トゥ・クライ』でデビュー。以後、自身のソロ、アリソン・クラウス&ユニオン・ステーション名義で活動を本格化させる。1990年に発表した自身のソロ『アイヴ・ガット・ザット・オールド・フィーリング』で初のグラミー賞を受賞。以後、前述のロバート・プラントとのコラボ作も含めれば、27のグラミー賞を獲得している。日本では無名でもアメリカでは、1990年代からずっとビッグ・ネームだったのだ。

彼女の作品を聴いてゆくと分かるが単なるブルーグラスやカントリーだけでなく、アメリカのルーツ・ミュージックを歌うアメリカーナ系のシンガーだと分かる。余談だが、彼女の活躍はCDのセールス面だけでなく、マンドリンやバンジョーの売り上げさえ伸ばしたと言われている。

共演も多く、ロバート・プラント以外にもレナード・コーエン(遺作『ユー・ウォント・イット・ダーカー』に参加)、リアン・ライムス、ドン・ヘリー、シンディ・ローパー、エミルー・ハリス、ギリアン・ウェルチなどとコラボレーションをしてきた。2009年にベスト・アルバム(入門者に最適)を発表、2011年にユニオン・ステーションと共に『ペーパー・エアプレーン』を発表。カントリー、フォーク、ブルースのチャートでNo.1、総合チャートでもトップ3に入った。本作はそれ以来の作品となる。

制作のきっかけは、ボブ・リチャードソンの写真をロンドンで観て、1960年代の女性や少女の雰囲気に魅かれてイメージができたこと。そして、ウィリー・ネルソン、マル・ハガードなどを手掛けたプロデューサー/ソング・ライター、バディ・キャノンをプロデュースに迎え入れることに成功したことによる。このふたつのきっかけが、アリソン・クラウス個人としては18年振りのソロ・アルバム制作に至らした。

1曲目の「ルージング・ユー」、10曲目の「ユー・ドント・ノウ・ミー」などに1960年代の香りがする。「ルージング・ユー」はブレンダー・リー、1963年のヒット。「ユー・ドント・ノウ・ミー」は1962年にレイ・チャールズが全米2位のヒットにしている。

この2曲ともバラッドだが、アルバムの半分くらいはスロー・バラッドの情感ある曲で占められている。ハイレゾ音源は、アコースティック・ナンバーの響きをCDより温かく伝えてくる。特に生ピアノ、スティール・ギターの音色は、ちょっと高性能のスピーカーで聴くと何とも言えない温かくゆったりとした味わいがある。ものすごく古いマイクとマイクロフォン・アンプでひろわれたヴォーカルも、ハイレゾ音源だと音声のリアリティが際立って伝わる。CD向きというより、アナログLPやハイレゾ音源を最初から意識して作ったのではと思わせる、まとまり感のある良音だ。

1960年代の空気感や初期のリンダ・ロンシュタットの好きな方には、絶対に聴いて頂きたい。

 

(文/岩田由記夫)

東京生まれ。ピンクタンク代表取締役。音楽、オーディオ評論家、音楽プロデューサー、DJなど。6歳でエルビス・プレスリーの「ハートブレイクホテル」に影響を受ける。1970年になると講談社の記者を経て、週間プレイボーイ、FMレコパル、ミュージックライフなどに執筆。FM&AM局の制作プロデュースやDJ、そしてレコード会社の経営アドバイザーも務める。また1980年代に入るとFM東京、ラジオニッポン、NHKなどでDJとして活躍。さらにCDや映像の製作までこなす多彩ぶり。現在はbayfm「ミュージック・インシュランス」(オンエアー日/毎週日曜日、午後11時00分より)を担当。主な著書に「僕が出会った素晴らしきミュージシャンたち」「フォーク」などがある。

 

e-onkyo_logo

のページへ

mora_logo

のページへ

 

関連記事

WPCR000080270_R_thumb

クラプトンと敬愛するB.B.キングとの共演作

2017年9月20日

UCCG-51096-H1-2

モーツァルトが最後に到達した「涙の日」

2017年9月15日

5.0.2 JP

9/27に遺作が発売されるL.ラッセルの3作目

2017年9月13日

ラナ・テ゛ル・レイ UICS-1324 ラスト・フォー・ライフ_thmub

生きることへの欲求を歌ったメジャー4作目

2017年9月6日

Book

第36巻好評発売中!

隔週刊CDつきマガジン

JAZZ VOCAL COLLECTION

BUY

牧野良幸のハイレゾのすゝめ