高音質ハイレゾ名盤

2017年5月10日

自ら設立したレーベルからの第1弾アルバム

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ヴォーカル群と演奏のバランス、生音の良さが際立つ、ストーンズの中でもベスト5に入る良音!
ザ・ローリング・ストーンズ『スティッキー・フィンガーズ』

ザ・ローリング・ストーンズが結成されたのは1962年。今年で55周年になる。バンド・メンバーもここまで続くとは思わなかったろう。ミック・ジャガー、キース・リチャーズ、チャーリー・ワッツと結成時のメンバーは3人になった。ロン・ウッドが正式加入したのは、1974年(1976年説もある)。43年が過ぎた。

彼らの初期のマネージャー/プロデューサーはアンドリュー・オールダム。元々はザ・ビートルズのA&Rマンだった。ザ・ローリング・ストーンズがザ・ビートルズの優等生的な態度に対し、不良っぽいイメージを売りにしたのは、アンドリュー・オールダムの考えによると言われている。やがてストーンズとオールダムは対立。音楽的な面もあるがマネージメントにおける金銭的な問題も絡んでいた。

アンドリュー・オールダムの影響下から抜け出したかった彼らは、1967年の『サタニック・マジェスターズ』で音楽面で別れを告げ、初のセルフ・プロデュースに挑んだ。マネージメント面でもオールダムから離れたかった彼らは、ついに1970年4月、“ローリング・ストーンズ・レコーズ”を設立した。社長には彼らが愛してやまなかったブルーズの名門チェス・レコードの設立者の息子マーシャル・チェスが就任した。

1971年、同レーベルからの第一弾シングル「ブラウン・シュガー」及びアルバムとして本作『スティッキー・フィンガーズ』がリリースされた。「ブラウン・シュガー」は、全英2位/全米1位となり、現在の独自路線に通じる活動は好調なスタートを切った。

アルバムのジャケットに使われたジーンズの下半身姿に本物のジッパーが付けられたデザインは、アンディ・ウォーホルによる。トリビアっぽいがジーンズ着用のモデルはジェッド・ジョンソン。ジッパーを下すと現れる下着姿のモデルはグレン・オブライアン、当時のウォーホルのアシスタントだった。このセクシャルなジャケットは一部ではリリースできず、缶から指が出る別デザインのものが用意され、スペインではそのタイプがリリースされた。

レコーディングは、ザ・ローリング・ストーンズ・モービル・ユニットとロンドンのオリンピック・スタジオとクレジットされている。実際は、例えば「ブラウン・シュガー」はアメリカのマッスル・ショールズ・サウンド・スタジオでメイン・トラックをレコーディング、オリンピック・スタジオでオーヴァー・ダブとミックス・ダウンが行われた。2曲目のニッキー・ホプキンスのピアノが光る「スウェイ」は、ミック・ジャガーの自宅で録音。マッスル・ショールズの録音も多い。

プロデュースは、1960年代後半から付き合いのあるジミー・ミラー。エンジニアはグリン&アンディ・ジョンズ。グリン・ジョンズは後にイーグルスなどのプロデュースも手掛けて名プロデューサーのひとりとなっている。

本作のレコーディング上の特徴は、ミック・ジャガー及びコーラスのヴォーカル群とバックのサウンドのバランスの良さだ。ヴォーカルを前に出し過ぎず、かといって引っ込み気味でもなく、ヴォーカルが楽器のひとつとして録音されている。もうひとつは、パーカッション、ピアノ、ストリングスなどの生音が良いことだ。全体的にアコースティック・サウンドと言える。

ハイレゾ音源だとそれら生楽器の音が特に良い。前出の「スウェイ」でのニッキー・ホプキンスの生ピアノの音は、これまでのCDでは最良の176.4kHz/24bitハイビット音源をダイレクト・カット(HRカッティング)し、プラチナSHMに収めたものより良音だ。このCDは相当に出来が良いのだが、アコースティック・サウンドの持つ情感は、ハイレゾ音源に及ばない。個人的にはNo.1としないが、数あるザ・ローリング・ストーンズのアルバムの中ではベスト5に入る良音だろう。

 

(文/岩田由記夫)

東京生まれ。ピンクタンク代表取締役。音楽、オーディオ評論家、音楽プロデューサー、DJなど。6歳でエルビス・プレスリーの「ハートブレイクホテル」に影響を受ける。1970年になると講談社の記者を経て、週間プレイボーイ、FMレコパル、ミュージックライフなどに執筆。FM&AM局の制作プロデュースやDJ、そしてレコード会社の経営アドバイザーも務める。また1980年代に入るとFM東京、ラジオニッポン、NHKなどでDJとして活躍。さらにCDや映像の製作までこなす多彩ぶり。現在はbayfm「ミュージック・インシュランス」(オンエアー日/毎週日曜日、午後11時00分より)を担当。主な著書に「僕が出会った素晴らしきミュージシャンたち」「フォーク」などがある。

 

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