高音質ハイレゾ名盤

2017年5月3日

Jベック、U2ボノも絶賛する歌姫の新作

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UCCU1538

ミュージシャン、プロデューサー、エンジニアがそれぞれ最高の仕事をした黄金比率のサウンド!
イメルダ・メイ『ライフ・ラヴ・フレッシュ・ブラッド』

インディーズなどアマチュア・ミュージシャンをよく聴いている。多くの方に共通しているのは音楽と演奏さえ良ければ、それでアピールできるという考え方だ。確かに演奏力と楽曲は大切だが、それだけで良いアルバムができるわけではない。プロデューサーとエンジニアの力量が重要なのだ。

アルバムの構成要素は、ミュージシャンが3分の1、プロデューサーが3分の1、エンジニアが3分の1とぼくは思っている。どんな良い楽曲でも好プロデュースと良質な録音がなされていないと、音楽の芯みたいなものが伝わりにくいものだ。ましてや音楽と同時にオーディオも愛するコアなファンには、プロデュースや音が再生によって可視化されるので、乱暴にただレコーディングされたものにあまり興味を持たないだろう。

こんなことをわざわざ述べたのは、イメルダ・メイの3年ぶりのこの新作が、プロデューサー、エンジニア、ミュージシャンが各3分の1、自分の仕事をこなすという黄金比率のサウンドになっているからだ。プロデューサーが大好きなT・ボーン・バーネットなので欲目になっているかもしれないが。ロス・ロボス、エルヴィス・コステロ、サム・フィリップスなどをスターダムに押し上げたその実力は、本作でも遺憾なく発揮されている。

T・ボーン・バーネットは本作でもギターで参加しているが、ソロ・アーティストとしてアルバムを発表している。かつてはボブ・ディランのバックでギターを弾いていたこともある。ルーツ・ミュージックに対し、造詣が深く、創造的な面と職人技のバランスの取れた名プロデューサーである。

レコーディングとミックス・ダウンを担当したジェイソン・ワーマーの仕事もこのアルバムに貢献している。1曲目「コール・ミー」、ジェフ・ベックの参加した2曲目「ブラック・ティアーズ」といったバラッドでの音場の濃密さ、ギターの響き、適正なヴォーカル・マイクが使用されたイメルダ・メイの声質の色気や温か味、説得力などは、優れたエンジニアだから可能な仕事とすぐに分かる。

イメルダ・メイは’12年に出産し、’15年には離婚と、ここ数年ドラマチックな人生を過ごしたのだが、そういった人生の嵐が去った後、再び穏やかな気持ちで音楽創造と向き合った。T・ボーン・バーネットの優れたプロデュース力は、そういった楽曲の裏にあるアーティストの心情まで引き出している。それができるから、名プロデューサーなのだ。

T・ボーン・バーネットの、特にアコースティックな録音に外れはないのだが、このアルバムもSHM-CD仕様のCDで充分にそれを感じ取れる。ハイレゾ音源だとより音場感が豊かになり、「ブラック・ティアーズ」のジェフ・ベックのギターの鳴り方のリアルさはCDを上回る。リアルと記したが、ハイレゾ音源だとそれが明瞭に聴こえる。
ザッカリー・ドーズの弾くエレクトリック・ベース、デニス・クラウチのアコースティック・ベース、この2種類のベースの違いもハイレゾならではの鳴り方で伝わってくる。

わずか7日間でこのアルバムは録音されているが、集中した仕事ならではのライヴ感がある。そのまとまり感のようなものが、ハイレゾだと色濃く聴ける。女性ヴォーカルの好きな方なら、「コール・ミー」、「ブラック・ティアーズ」と最初の2曲を聴いただけで、音の持つ情感に惚れてしまうだろう。CDよりもハイレゾがよりその点を強調してくれる。

ジェフ・ベック、U2のボノ、ヴァン・モリソン、スモーキー・ロビンソン、シネイド・オコナー、ロバート・プラントなど超大物ミュージシャンに認められ、共演もしてきた実力派のイメルダ・メイだが、この4作目は、代表作となるだろう。高度なプロダクション・ワークの光る傑作だ。

 

(文/岩田由記夫)

東京生まれ。ピンクタンク代表取締役。音楽、オーディオ評論家、音楽プロデューサー、DJなど。6歳でエルビス・プレスリーの「ハートブレイクホテル」に影響を受ける。1970年になると講談社の記者を経て、週間プレイボーイ、FMレコパル、ミュージックライフなどに執筆。FM&AM局の制作プロデュースやDJ、そしてレコード会社の経営アドバイザーも務める。また1980年代に入るとFM東京、ラジオニッポン、NHKなどでDJとして活躍。さらにCDや映像の製作までこなす多彩ぶり。現在はbayfm「ミュージック・インシュランス」(オンエアー日/毎週日曜日、午後11時00分より)を担当。主な著書に「僕が出会った素晴らしきミュージシャンたち」「フォーク」などがある。

 

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