高音質ハイレゾ名盤

2017年4月19日

第2期黄金時代を決定づけた10thアルバム

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ゴリゴリのハードロックから多彩なサウンドへ、録音の質も新たな段階へと進化したアルバム
エアロスミス『パンプ』

高校を卒業できないまま、いくつかのバンドを渡り歩いていたリード・ヴォーカリストのスティーヴン・タイラーが、ジェフ・ベックのフリークだったギタリストのジョー・ペリーと出逢い、バンドを組んだのは、1970年のことだった。エアロスミスというグループ名に定まったのは1971年、もう46年も前のことだ。

最初は、ハイ・スクールやカレッジでライヴをして腕を上げた。1972年にボストンからニューヨークへ進出。パンクやハードロックで有名な伝説のライヴ・ハウス、マクシス・カンサス・シティで凄絶なライヴを行い、その名はわずか一週間で音楽関係者の間で知られるようになった。1972年、すぐにメジャーのCBSと契約。1973年1月、『野獣生誕』でメジャー・デビューを飾る。結成からわずか3年でメジャー・デビューできたのは、このバンドの潜在能力の高さを示している。

「ドリーム・オン」のスマッシュ・ヒットやライヴ・ツアーの積み重ねで徐々に人気を上げ、3枚目のアルバム『闇夜のヘヴィ・ロック』が出ると同時に、それまでのアルバムがすべてゴールド・ディスクとなった。彼らの人気を全世界で決定的にしたのは、1976年発表の『ロックス』だ。1970年代のロック名盤などといった企画に欠かせないこのアルバムは、全米3位となり、日本でもこの頃から広くハードロック・ファンに知られるようになった。

順調にキャリアを重ねていったエアロスミスだが、1970年代後半になるとスティーヴン・タイラーとジョー・ペリーの音楽性の違いが表面化し、ついに1980年、ジョー・ペリーはバンドを脱退し、ジョー・ペリー・プロジェクトを結成する。残ったメンバーは、ギタリストにジミー・クレスポ、リック・デュフェイを迎え、1982年秋には久々のアルバム『美獣乱舞』を発表するが、去って行ったジョー・ペリー、ブラッド・ウィットフォードの穴を埋められず、解散説が流れ、その名はロック史に埋もれる危機に陥った。

それを救ったのは、ファンの熱い想いと1970年代末から、ヴァン・ヘイレンなどをきっかけに起こったロサンゼルスのハードロック・ムーヴメントだった。モトリー・クルーやラットといった新進バンドがエアロスミスを絶賛。これがメンバーの心を動かし、1984年、オリジナル・メンバーによって復活した。この再結成は大成功で、再び人気を取り戻した。この1984年以降は、エアロスミス第2期黄金時代といえる。

ブルース・フェアバーンのプロデュースのもと、1989年に発表された『パンプ』は、それまでのゴリゴリのハードロック中心のエアロスミスが、ポップスやカントリーなどの要素も取り入れ、サウンドの多様化を狙った作品である。録音エンジニア、ミックス・ダウンのマイク・フレーザーも、それまでの音色より、分離も重視したクリアな音質も取り入れ始めた。ずっとエアロスミスを聴き続けた、ハードロック・ファンにして、オーディオ・ファンという方は、このアルバムからエアロスミスのレコーディング面の質が、新たなフェーズに入ったことがわかるだろう。

「ホワット・イット・テイクス」を聴くと、録音面の進化がよくわかる。ハードロックならではの音魂感と分離のバランスがとても良いのだ。CDは高音質のSHM-CDなので充分に満足できるが、ハイレゾ音源だとスタジオの空気感がより濃密になる。バラッド曲ならではのジョー・ペリーの聴かせるギターは、ダイレクトに録った音ではなく、スタジオの中にアンプを置いて、その音をマイクで拾った音響イメージが伝わってくる。ハイレゾ音源だとよりそれが鮮やかに聴ける。ドラムスの金物類が空気を振動させるイメージ、スティーヴン・タイラーのヴォーカルのリアリティもハイレゾ音源が勝る。オーディオ好きのハードロック・ファンにお聴き頂きたい好録音だ。

 

 

(文/岩田由記夫)

東京生まれ。ピンクタンク代表取締役。音楽、オーディオ評論家、音楽プロデューサー、DJなど。6歳でエルビス・プレスリーの「ハートブレイクホテル」に影響を受ける。1970年になると講談社の記者を経て、週間プレイボーイ、FMレコパル、ミュージックライフなどに執筆。FM&AM局の制作プロデュースやDJ、そしてレコード会社の経営アドバイザーも務める。また1980年代に入るとFM東京、ラジオニッポン、NHKなどでDJとして活躍。さらにCDや映像の製作までこなす多彩ぶり。現在はbayfm「ミュージック・インシュランス」(オンエアー日/毎週日曜日、午後11時00分より)を担当。主な著書に「僕が出会った素晴らしきミュージシャンたち」「フォーク」などがある。

 

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