高音質ハイレゾ名盤

2017年3月29日

“ハイレゾ時代の歌姫” 珠玉のバラッドベスト

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SHANTI__表1-4 [復元]ヴォーカルの温かみ、アコースティック・ギターの響きなど、“音色のコク”を味わいたい。
SHANTI『SHANTI sings BALLDS』

 SHANTI(シャンティ)は、本名をシャンティ・スナイダーといい、人気バンドだったゴダイゴのドラマー、トミー・スナイダーの娘さんだ。ただ、2歳の時から別れて暮らしていたので、ゴダイゴの黄金時代は知らないという。湘南の海のすぐ側で育ち、幼い頃は、海辺の生物や虫たちと遊ぶのが大好きだったそうだ。

ミュージシャンだった父親の影響は離れて暮らしていたのでまったく受けていない。音楽に強く目覚めたのは、アメリカン・スクールに通っていたティーン・エイジャー時代。好きだったドリームズ・カム・トゥルーの話を音楽の先達に話したところ、ただ単に好きでいるより、ヴォーカルの吉田美和の好きなアレサ・フランクリンを聴くとか、ルーツを探るべきだと教えられる。

彼女がユニークなのは、そこでソウルの女王アレサ・フランクリンを聴くだけでなく、彼女がアトランティック・レコードに移籍してブレイクする以前、あまり売れなかったスタンダードシンガー時代までルーツを掘り下げたことだ。アレサ・フランクリンの「縁は異なもの」(オリジナルは、ダイナ・ワシントンが大ヒットさせた)を知った彼女は、スタンダードに目覚め、シンガーの道を歩むことになる。父親のコネクションを使わず、スタジオやライヴでのバック・コーラスなどでキャリアを積み上げ、2008年、ようやくアルバム・デビューを飾った。

その力強く、美しい歌声も人気となったが、多くのオーディオ・ファンは、その録音の良さにも惚れて、“ハイレゾ時代の歌姫”とも呼ばれるようになった。実際、彼女のアルバムは、ハイレゾ化されると常にハイレゾ・チャートの上位を占めてきた。

SHANTIのサウンドの良さは、女性らしく、しかし力強いヴォーカルの録音はもちろん、バックのサウンドにも、マイクの選び方、セッティング、スタジオの音場感など、オーディオ・ファンを喜ばせる配慮がよくなされている。アコースティック・サウンドがメインなので、各楽器の特性や繊細な鳴り方が、どのアルバムからもうまく伝わってくる。

『SHANTI sings BALLADS』は、そんな彼女の新作。これまで発表した6枚のアルバムから選りすぐったバラッド・カバー曲に新録が加えられている。新録は公開中の映画『サバイバルファミリー』の主題歌「ハード・タイムズ・カム・アゲイン・ノー・モア」、トラディショナルにSHANTI自身が詞をつけた「ホーム・アット・ラスト」、「オーヴァー・ザ・レインボウ」だ。ジャズ・シンガーというイメージはあるが、カヴァー曲はスタンダードだけでなく、ポップスやロックの名曲まで幅広く、ジャジィなポップス・アルバムとしても楽しめる。エルトン・ジョンの「ユア・ソング」、スティングの「フィールズ・オブ・ゴールド」、シンディ・ローパー「タイム・アフター・タイム」、ザ・ビートルズ「アクロス・ジ・ユニヴァース」など、ポップス/ロック・ファンにもお馴染みの曲が多い。

オリジナルCDも、CDとしてはもっとも高い規格といえるアルティメイト・ハイ・クオリティCD(UHQCD)が採用されていて、安価なハイレゾ・システムで聴くなら、ミディアム・クラス以上のシステムでCDを再生した方がずっと良い。ただ、中級機以上でハイレゾ音源を再生すると、同級クラスで再生したCDとは違う音世界が広がる。再生される音に伸びがあり、CDに比べて余裕があるように感じられるのだ。「フィールズ・オブ・ゴールド」のヴォーカルの温かみ、アコースティック・ギターの響き方は、同じシステムで聴くならハイレゾ音源に優位性がある。これは、“音色のコク”とでも呼びたいイメージだ。何かひとつ、隠し味が加わり、それがたまらない音の旨味につながっている。

話は変わるが、ぼくがDJをしている第一生命提供、bayfm 78.0MHz、日曜夜9時からの「ミュージック・インシュアランス~音楽は心の保険~」の新パートナーを4月からSHANTIが務めてくれている。かなりのオーディオ・ファンでもあるので、番組ではオーディオの話も増えると思う。ぜひ一度、聴いてください。

 

 

(文/岩田由記夫)

東京生まれ。ピンクタンク代表取締役。音楽、オーディオ評論家、音楽プロデューサー、DJなど。6歳でエルビス・プレスリーの「ハートブレイクホテル」に影響を受ける。1970年になると講談社の記者を経て、週間プレイボーイ、FMレコパル、ミュージックライフなどに執筆。FM&AM局の制作プロデュースやDJ、そしてレコード会社の経営アドバイザーも務める。また1980年代に入るとFM東京、ラジオニッポン、NHKなどでDJとして活躍。さらにCDや映像の製作までこなす多彩ぶり。現在はbayfm「ミュージック・インシュランス」(オンエアー日/毎週日曜日、午後11時00分より)を担当。主な著書に「僕が出会った素晴らしきミュージシャンたち」「フォーク」などがある。

 

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