高音質ハイレゾ名盤

2017年3月1日

故J.ウェットンの超絶プレイを迫力の音で!

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プログレ界のスター4人が生み出す究極のポップスが、CDでは実現できなかったスケール感で甦る!
エイジア『詠時感(エイジア)~時へのロマン~』

2017年1月31日、ジョン・ウェットンが67歳でこの世を去った。UKロック史上、10本の指に入るベーシストだった。プログレッシヴ・ロックの人と思われがちだが、R&B、ブルースも通ったオールマイティなベーシストだった。自分は“バッハとベートーヴェンとモーツァルトとブライアン・ウィルソン(ザ・ビーチ・ボーイズ)とビートルズによって培われた”と語る人だった。政界渡り鳥という言葉があるが、ジョン・ウェットンはUK音楽界の偉大な渡り鳥だった。

1949年6月12日、英国のダービーに生まれ、ドーセットのボーンマスに引っ越した12歳の年に、シャドウズ・スタイルのバンドを結成した。アートスクールを中退し、ソウル・バンドやジャズ・コンボを転々とした。コロシアムのジェームス・リザーランドに誘われて、彼の新バンド、モーガル・スラッシュに参加。1971年のアルバム『MOGUL THRASH』がプロ・デビューとなった。そこからUK音楽界渡り鳥人生が始まる。ルネッサンス、ファミリー、キング・クリムゾン、ロキシー・ミュージック、ユーライア・ヒープ、ブライアン・フェリー・バンド、U.K.、ウィッシュボーン・アッシュ……。

“3、4分のアイデアがあれば、それを6分から10分まで引き伸ばすのがプログレッシヴ・ロックのひとつのスタイル”と語ったこともあるウェットンは、“プログレは自分の足枷だった”とも語っている。そんな彼が、元ELPのカール・パーマー、元イエスのスティーヴ・ハウ、元バグルス、イエスのジェフ・ダウンズと1981年に結成したのが、エイジアだ。堅実なテクニックとプログレで鍛えたアンサンブルによって、4分間の究極のポップスを生み出す。それがエイジアのコンセプトだった。絶滅、あるいは形骸化したプログレッシヴ・ロックを1980年代的な感性でリメイクする、それがエイジアだった。

1982年3月にリリースされた本作は、9週連続全米No.1となり、年間総合チャートでも1位を獲得した。全9曲すべてにジョン・ウェットンは作曲者として加わり、ベーシスト、ヴォーカリストの才能に加えて、ポップ・ソングメイカーとしても高い評価を得たのだった。

『詠時感(エイジア)~時へのロマン~』はロンドンの名門タウンハウス・スタジオでレコーディングされ、プロデュースとエンジニアリングは、クイーンのエンジニアリングやジャーニーなどを手掛けてきたマイク・ストーンが選ばれた。

当時のレコーディング状況は、アナログ録音48チャンネル、ないしは48チャンネルを2台使用した96チャンネルという多重録音の時代だった。アナログLPで最初に発売された本作を聴くと、細部のオーヴァーダビングに加えて、音場を壮大にするというか、広く取るというマイク・ストーンのアイデアがよく伝わってきた。すぐにCD化されたが、初期のCDはアナログ多重録音を再生するのを苦手としていた。アナログLPで感じた広い音場が、詰まった淋しい音色となってしまった。これは、48チャンネル以上の多重録音を行った他の作品にも共通した。

その後、CDへのトランスファー技術の進歩、リマスタリングなどの改善により、2013年発表の同盤のプラチナムSHM-CDでは、HRカッティングの効果もあって、音色はかなり良化した。今回、ハイレゾ音源を聴いて、デジタルトランスファーが生む音の詰まるイメージは、ほぼ無くなったと感じた。「ヒート・オブ・ザ・モーメント」のスペイシーな音の広がりは、CDでは実現できなかったスケール感を感じさせてくれる。音の伸びに目詰まり感が消失したのだ。分離も多重録音にありがちだったくぐもった伝わり方は無くなり、ジョン・ウェットンの堅実でいて超絶なベース・プレイもCD以上の迫力で伝わってきた。

 

(文/岩田由記夫)

東京生まれ。ピンクタンク代表取締役。音楽、オーディオ評論家、音楽プロデューサー、DJなど。6歳でエルビス・プレスリーの「ハートブレイクホテル」に影響を受ける。1970年になると講談社の記者を経て、週間プレイボーイ、FMレコパル、ミュージックライフなどに執筆。FM&AM局の制作プロデュースやDJ、そしてレコード会社の経営アドバイザーも務める。また1980年代に入るとFM東京、ラジオニッポン、NHKなどでDJとして活躍。さらにCDや映像の製作までこなす多彩ぶり。現在はbayfm「ミュージック・インシュランス」(オンエアー日/毎週日曜日、午後11時00分より)を担当。主な著書に「僕が出会った素晴らしきミュージシャンたち」「フォーク」などがある。

 

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