高音質ハイレゾ名盤

2017年2月15日

原点を貫くライヴそのままの熱いサウンド

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フルボリュームで聴くと、自分も観客のひとりとなってライヴハウスにいるかのよう!
オアシス『モーニング・グローリー』

1960年代、ザ・ビートルズ、ザ・ローリング・ストーンズなど、イギリスのバンドが全米チャートを席捲したことをブリティッシュ・インヴェイジョン(英国の侵略)と呼んだ。1970年代中期のパンク・ムーヴメントは、その後の音楽に多大な影響を与えたものの、全米チャートでは歓迎されなかった。1990年代に入って、再びイギリスのバンドがアメリカン・チャートや世界中で注目を集めるようになったのが、第2次ブリティッシュ・インヴェイジョン。本国イギリスではそういったサウンドをブリット・ポップと呼び、それが世界的に定着した。そのブリット・ポップの代表格がオアシスで、彼らの残したアルバムの中でもっとも売れて、代表作と言われるのが、1995年発表のこのセカンド・アルバム『モーニング・グローリー』だった。

オアシスというと砂漠の泉を連想するが、彼らのグループ名は、砂漠の泉からとられていない。中心メンバーのノエル&リアム・ギャラガー兄弟の寝室に貼ってあったインスパイラル・カーペッツのツアー・ポスターのひとつの開催地、スウィンドンのオアシス・レジャー・センターから命名されている。

オアシスの成功には幾つもの要因があるが、ひとつはザ・ビートルズの影響を受けて、正統派のブリティッシュ・ポップ・ロック・サウンドを完成させたことだろう(実際に彼らは多くのザ・ビートルズ・ナンバーをカヴァーしている)。次に、ストレートで時にメッセージ性の高いその詞だ。イギリスの労働者階級の代弁者でもあった。ステージなどのファッションもそれまでのロックスターのきらびやかなステージ衣装やパンク・ミュージシャンの過激なものではなく、労働者階級の若者の普段着であるさり気ないものだったのも受けた。時にはジャージー姿でステージに上がったりしている。

録音面で目立ったのは、まとめあげたようなサウンドでなく、当時のイギリスの音楽の発信地であったライヴハウスで聴こえる音に近いことだ。オーディオ的な良音や多重録音のメリットを狙った音でなく、荒々しい、狭い空間で鳴り渡るライヴハウスならではのサウンドをCDに移植したのだ。このことはオアシスを語る文献でもほとんど目にしたことはないが、それ以前のロック・バンドや彼らの同時代のブリット・ポップ・バンドとオアシスの音質は、明らかに差がある。1994年9月、デビュー・アルバムを発表して初来日したオアシスをクアトロで観たが、そこで鳴っていたサウンドが、彼らの原点であり、スタジアム・クラスでライヴをするようになっても、彼らのアルバムは大体、ライヴハウスの熱を感じさせる音だった。インディーズであることを忘れない音質をどんなにメジャーになっても貫いたのだろう。

本作で言えば、大ヒットした「ロール・ウィズ・イット」などオアシス的な録音の典型だろう。狭いライヴハウス空間でガンガン音が鳴り響いているイメージがよく伝わってくる。リアルタイムで発売されたCDよりも2014年リマスター音源でリイシューされたCDの方はより、ライヴハウス的なイメージが濃くなり、ハイレゾ音源をフルボリュームで聴くと自分がオアシスの観客のひとりとなって、ライヴハウスにいる気の度合いが髙くなる。スタジオ録音なのにライヴ的なイメージが凄く強いのがオアシスのサウンドで、それがハイレゾ音源だと、より空間イメージがはっきりと感じられる。当時はまだダウンロード音源+ヘッドホンという現在の聴き方よりも、スピーカーで再生するのが主流だった。ハイレゾ音源もヘッドホンで聴くよりスピーカーで聴く方が、オアシスの狙ったサウンド・イメージはより伝わってくる。ノエル&リアム兄弟の確執により解散してしまったが、血を分けた兄弟、10年、20年後の再結成はあると思っている。

 

(文/岩田由記夫)

東京生まれ。ピンクタンク代表取締役。音楽、オーディオ評論家、音楽プロデューサー、DJなど。6歳でエルビス・プレスリーの「ハートブレイクホテル」に影響を受ける。1970年になると講談社の記者を経て、週間プレイボーイ、FMレコパル、ミュージックライフなどに執筆。FM&AM局の制作プロデュースやDJ、そしてレコード会社の経営アドバイザーも務める。また1980年代に入るとFM東京、ラジオニッポン、NHKなどでDJとして活躍。さらにCDや映像の製作までこなす多彩ぶり。現在はbayfm「ミュージック・インシュランス」(オンエアー日/毎週日曜日、午後11時00分より)を担当。主な著書に「僕が出会った素晴らしきミュージシャンたち」「フォーク」などがある。

 

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