高音質ハイレゾ名盤

2016年11月23日

ギターだけであらゆる感情を表す超絶テク

Theme Tag


SICP30088_FJ023876 
独自の世界を確立し、スーパーギタリストの座を不動のものとした名盤
ジェフ・ベック『ワイアード』

 ぼくの心の中には、エリック・クラプトン、ジミー・ペイジ、ジェフ・ベックという三大ギタリストにジミ・ヘンドリックスを含めた4人のギタリストのプレイが強く焼き付けられている。
エドワード・ヴァン・ヘイレンとかスティーヴ・ヴァイなどこの4人以降に登場した素晴らしいギタリストもいるが、ロック・サウンドのギターを聴く時は、どうしても4人を判断の基準としてしまう。ブルーズの基本に忠実で堅実なプレイのエリック・クラプトン。バンドの中で構成的なフレーズを特に得意とするジミー・ペイジ。天才としか表現できないジミ・ヘンドリックス。そしてジェフ・ベックは、常に前進する超絶テクニックを持つギタリストと思っている。

そんな三大ギタリストも齢を重ね、ジェフ・ベックも今年、デビュー50周年を迎えた。それを記念して彼の名作が次々とSA-CD/CDのハイブリッド・ディスクでリイシューされている。今回、ご紹介する『ワイアード』もデビュー50周年、アルバム発表40周年記念盤としてハイブリッド・ディスクが発表されたばかりだ。しかもこのSA-CD/CDは、発売当時から入手困難だったマルチ・チャンネル盤(クアドラフォニック)で、5.1chで再生が可能だ。同時にハイレゾ音源も発表となった。SA-CD5.1chの世界は、ステレオ再生とは別次元の音なので、CD部分とハイレゾ音源を比較してみる。

1曲目の「レッド・ブーツ」の曲頭0:08まではドラムスの音だけだ。CDも最新リマスタリングでそれなりに良音だが、ハイレゾ音源だとスタジオ空間に広がっていくイメージがより鮮やかだ。音色もCDに比べて伸び伸びとしている。ヘッドホンでなく、スピーカーでヴォリュームを上げて聴くと、その違いはより明確に伝わってくる。

ドラムスの音の比較という意味では、「ヘッド・フォー・バックステージ・パス」も適している。「レッド・ブーツ」はナラダ・マイケル・ウォルデンが叩いていたが、この曲はリチャード・ベイリーが担当している。多彩なドラム・テクニックとウィルバー・バスコムのベース、ジェフ・ベックのギターのからみ方は圧巻だ。
00:39のところで金物の音がチーンと入る。この音色は、CDとハイレゾ音源の違いを知るのに適している。スタジオ内に金属的な音が一瞬、弾けていく様のリアリティが、ハイレゾ音源の方がまさっている。この名作の中でも名曲として知られる「グッドバイ・ポーク・パイ・ハット」では、ハイレゾ音源だとジェフ・ベックが指でギター弦を押さえる圧力によって音色が微妙に変化していくイメージが良くわかる。スタジオ内に置かれたギターアンプの音をマイクが拾っているイメージが、ハイレゾ音源だと掴みやすい。

1970年代のジェフ・ベックは、『ブロウ・バイ・ブロウ』と本作によって、スーパーギタリストとしての座を不動のものにした。クロスオーヴァー/フュージョンという言葉が定着する前に、ジャズ畑の優れたセッション・メンと組んで、ギター・インストゥルメンタルの深淵を極めた功績は大きい。2作とも、プロデュースはザ・ビートルズを育て上げたことで知られるジョージ・マーティンが手掛けた。

かつてジョージ・マーティンと会った時、彼はジェフ・ベックのこの2作について、可能性のもっともあるギタリストの原点をサウンド化しようとしたのが、ポリシーだったと語っていた。実際にこの2作で、ジェフ・ベックは自分の情感、意志、感情表現などを自由自在にサウンド化することに成功している。
エリック・クラプトンにはヴォーカルがある。ジミー・ペイジには優れたバンドがあった。別に意識はしていなかったろうが、このふたりとは異なる、ギターだけですべてを表現する独自の世界を、『ブロウ・バイ・ブロウ』と『ワイアード』でジェフ・ベックは確立したのだ。

 

(文/岩田由記夫)

東京生まれ。ピンクタンク代表取締役。音楽、オーディオ評論家、音楽プロデューサー、DJなど。6歳でエルビス・プレスリーの「ハートブレイクホテル」に影響を受ける。1970年になると講談社の記者を経て、週間プレイボーイ、FMレコパル、ミュージックライフなどに執筆。FM&AM局の制作プロデュースやDJ、そしてレコード会社の経営アドバイザーも務める。また1980年代に入るとFM東京、ラジオニッポン、NHKなどでDJとして活躍。さらにCDや映像の製作までこなす多彩ぶり。現在はbayfm「ミュージック・インシュランス」(オンエアー日/毎週日曜日、午後11時00分より)を担当。主な著書に「僕が出会った素晴らしきミュージシャンたち」「フォーク」などがある。

 

e-onkyo_logo

のページへ

関連記事

WPCR000080270_R_thumb

クラプトンと敬愛するB.B.キングとの共演作

2017年9月20日

UCCG-51096-H1-2

モーツァルトが最後に到達した「涙の日」

2017年9月15日

5.0.2 JP

9/27に遺作が発売されるL.ラッセルの3作目

2017年9月13日

ラナ・テ゛ル・レイ UICS-1324 ラスト・フォー・ライフ_thmub

生きることへの欲求を歌ったメジャー4作目

2017年9月6日

Book

第37巻好評発売中!

隔週刊CDつきマガジン

JAZZ VOCAL COLLECTION

BUY

牧野良幸のハイレゾのすゝめ