高音質ハイレゾ名盤

2017年9月27日

暗闇を抜け出し新たなスタートを切った1枚

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ニール・ヤングを聴くならLPかハイレゾ。細部の音に光が当たったことで、より増したグルーヴ感。
ニール・ヤング『ズマ』

1990年代、そして21世紀に入ってからのニール・ヤングは実に精力的だ。毎年のようにニュー・アルバムがリリースされる。さらに莫大な未発表音源をファンの鑑賞に耐える形にしたアーカイヴ・シリーズもリリースされ続けている。この9月にも、1976年8月にカリフォルニア州マリブの名門スタジオ、インディゴで録音、ヤング・ファンにはおなじみのデヴィッド・ブリッグスがプロデュースした『ヒッチハイカー』が発売されたばかりだ。

個人的で申し訳ないがニール・ヤングは自分にとって恩人であり、人生の師と思っている。6歳でエルヴィス・プレスリーと春日八郎の虜になり、音楽少年となった。中学2年でザ・ビートルズと出逢い、何か音楽に関係した仕事をしたいと思った。10代、多感な時に様々な音楽を浴びるように聴いた。1970年4月、19歳の春、ザ・ビートルズが解散した。この年には、ジャニス・ジョプリン、ジミ・ヘンドリックスなど愛した人たちが旅立ち、ウッドストックは幻になろうとしていた。ぼくも今も続くあるバンドからの加入の誘いを断わり、個人的な事情もあり、自暴自棄な生活を送っていた。今から思うと人生のどん底というものがあるなら、あの時だったと思う。そこで出逢ったのが、ニール・ヤングの『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ』だった。1970年発表のこのアルバムと出逢えなかったら、この原稿も書いていなかったのは確かだ。あの年からニール・ヤングは、導師のひとりとなった。

そんなニール・ヤングも悩みを持っていた。1973年に録音されたのに1975年まで一時はお蔵入りになっていたアルバム『今宵その夜』にその苦悩が聴ける。ドラッグ・カルチャーが音楽シーンに翳を作り、彼を支えるバンド、クレイジー・ホースのダニー・ウィットン、信用していたローディーのブルース・ベリーなどが相次いでこの世を去った。その悲しみが『今宵その夜』に詰まっている。
だが、最後から2曲目の「タイアド・アイズ」では、罪の意識を感じながらも、それを受け入れる姿勢がうかがえた。

そして同じ年、『Zuma(ズマ)』がリリースされた。1曲目の「ドント・クライ・ノー・ティアーズ」を聴いた時、彼が“その夜”の暗闇から解放されたことが伝わって来た。この曲でニール・ヤングは、リスタートを切り、それが現在までの精力的な活動に通じていると思う。自分も何とか、職業ライターになった翌年の作品だった。だから数あるニール・ヤングの傑作、名作の中でも『ズマ』が好きなのだ。「コルテス・ザ・キラー」もハイライト・チューンだ。スペイン人によるアメリカ先住民族アステカ族のジェノサイドをテーマにしたシリアスな内容だが、ニール・ヤングがいかに歴史、世界を観ているかよく分かる楽曲だ。

ダウンロードが主流になった時に、真っ先に圧縮音源の音のひどさを指摘したのもニール・ヤングだった。音楽活動を一時休止し、高音質携帯プレーヤー、Pono(ポノ)の開発に尽力した。そんなニール・ヤングだから、常にアルバムの内容にあった最良の音質にこだわって来た。オーディオ的に音が良いというのでなく、自分がその時に演奏する音楽にもっともふさわしい音色を探し出し、エンジニアと共に創造する天才なのだ。

ニール・ヤングもきっと認めると思うが、WAV音源であるCDよりもflac/192kHz/24bitのハイレゾ音源の方が、明らかに音の伸びが良い。クレイジー・ホースと共に一発録りをしたであろう「ドント・クライ・ノー・ティアーズ」の持つ希望の輝度が、ハイレゾ音源の方が明るい。細部の音に光が当たったことで、グルーヴ感がより増したように思える。ニール・ヤングを聴くなら、アナログLPかハイレゾ音源。彼のマニアなら、この意味を御理解いただけると思う。

 

 

(文/岩田由記夫)

東京生まれ。ピンクタンク代表取締役。音楽、オーディオ評論家、音楽プロデューサー、DJなど。6歳でエルビス・プレスリーの「ハートブレイクホテル」に影響を受ける。1970年になると講談社の記者を経て、週間プレイボーイ、FMレコパル、ミュージックライフなどに執筆。FM&AM局の制作プロデュースやDJ、そしてレコード会社の経営アドバイザーも務める。また1980年代に入るとFM東京、ラジオニッポン、NHKなどでDJとして活躍。さらにCDや映像の製作までこなす多彩ぶり。現在はbayfm「ミュージック・インシュランス」(オンエアー日/毎週日曜日、午後11時00分より)を担当。主な著書に「僕が出会った素晴らしきミュージシャンたち」「フォーク」などがある。

 

 

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