高音質ハイレゾ名盤

2017年9月20日

クラプトンと敬愛するB.B.キングとの共演作

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ほとんどが一発録り、そのスタジオの熱気をハイレゾはより温かく、濃密に伝える。
B.B.キング&エリック・クラプトン『ライディング・ウィズ・ザ・キング』

どこにしまったか忘れているのだが、ぼくの宝物のひとつに、B.B.KINGと刻印された赤いギター・ピックがある。1960年代末、ベトナム戦争を戦うアメリカ軍の慰問のためにB.B.キングは、日本の米軍基地にやって来た。そのついでに赤坂にあった有名なディスコでライヴをした。日本の音楽ファンにはそれほど当時は知られていなかったし、シークレット・ライヴでもあったので、聴衆は外国人が半数で総数200人にも満たなかったと思う。それでも御機嫌にライヴを行い、最終曲付近で、赤いピックをポケットから出して何十枚か観客に投げた。それを拾ったというわけだ。1990年代、やはり小さなライヴ・スペースで観た時も同じように終演近くでピックを投げていたけど、この時は拾えなかった。

そんなB.B.キングが89歳でこの世を去って2年以上過ぎる。その死を、世界中の音楽ファン、ミュージシャンたちが悲しんだが、もっとも悲しんだひとりが、B.B.キングよりおよそ20歳年下のエリック・クラプトンだったと思う。彼を自分の音楽人生のメイン・ヒーローと公言し、その愛は父親に向けられたものに近かったろう。

スーパー・ギタリストとなって、誰とでも共演できるようになって、エリック・クラプトンはあらゆるミュージシャンのバックでギターを弾くことをソロ活動と同じく好んだ。ザ・ビートルズ、ザ・ローリング・ストーンズから、イタリアでは有名だが世界的にはさほど知られていなかったズッケロまで、彼がギターを弾いたミュージシャンは、莫大な数になる。

B.B.キングとも何度も共演している。本作は、2000年リリースだが、1990年代に限っても黒人音楽の殿堂アポロ・シアターの記念イベント、’97年のB.B.キングのアルバム『デューシズ・ワイルド』への参加、’99年のグラミー賞(第41回)では共にステージに立った。そんなふたりが、ついに共同名義のアルバムを制作した、それが本作だ。タイトル曲「ライディング・ウィズ・ザ・キング」は、ジョン・ハイアットの名曲カヴァーだが、カブリオレのドライバーズ・シートで運転するクラプトン、後席でリラックスするキングというジャケットの構図をイメージさせる曲名であり、アルバム・タイトルだ。“王様と走っている”という意味と、王様=B.B.キングを演奏面で”ノせる”というダブル・ミーニングなのではないだろうか。

1990年代のエリック・クラプトンをサポートしてきたネイザン・イースト(ベース)、アンディ・フェアウェザー・ロウ(ギター)、スティーヴ・ガッド(ドラムス)の3人のバックを中心に元クルセイダーズの達人ピアニスト、ジョー・サンプルやジミー・ヴォーン(スティーヴィー・レイ・ヴォーンの兄)、ドイル・ブラムホールⅡなども参加している。

ほとんどが一発録音。アナログ録音だろう。そのイメージはCDでも充分に伝わってくるが、ハイレゾ音源の方がスタジオの熱気が、より温かく濃密に思える。エリック・クラプトン、B.B.キングのヴォーカル&ギターはもちろん良音だが、CDよりも迫力があり、リアルなのは、名手スティーヴ・ガッドの重くてジャストでいて、グルーヴ感もあるドラムスだろう。オープニングのタイトル曲から、その音色の確かさが、ハイレゾ音源だとよりCDに比べて伝わってくる。大胆かつ繊細なジョー・サンプルのピアノもハイレゾ音源だと特色がわかりやすい。「キー・トゥ・ザ・ハイウェイ」と「ウォリード・ライフ・ブルース」の2曲は、完全なアコースティック・ナンバーだが、ハイレゾ音源とCDではより音色の違いが聴き分けられるだろう。

エリック・クラプトンもあと何年、現役でいられるかわからないが、彼のファンだけでなく、ロック/ブルーズ・ファンの心に残る名作と後世まで伝えられるだろう。

 

(文/岩田由記夫)

東京生まれ。ピンクタンク代表取締役。音楽、オーディオ評論家、音楽プロデューサー、DJなど。6歳でエルビス・プレスリーの「ハートブレイクホテル」に影響を受ける。1970年になると講談社の記者を経て、週間プレイボーイ、FMレコパル、ミュージックライフなどに執筆。FM&AM局の制作プロデュースやDJ、そしてレコード会社の経営アドバイザーも務める。また1980年代に入るとFM東京、ラジオニッポン、NHKなどでDJとして活躍。さらにCDや映像の製作までこなす多彩ぶり。現在はbayfm「ミュージック・インシュランス」(オンエアー日/毎週日曜日、午後11時00分より)を担当。主な著書に「僕が出会った素晴らしきミュージシャンたち」「フォーク」などがある。

 

 

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