高音質ハイレゾ名盤

2017年9月13日

9/27に遺作が発売されるL.ラッセルの3作目

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5.0.2 JP

もともと良音として知られる1枚、どこかうら寂しい情緒がハイレゾではより深く味わえる。
レオン・ラッセル『カーニー』

レオン・ラッセルがあの世に旅立って約1年が過ぎようとしている。9月27日には、死の直前までレコーディングしていた遺作となるスタジオ・アルバム『ラスト・レコーディング~彼方の岸辺で』がリリースされる。

シンガー・ソングライターとして不動の地位を築いていたが、全世界で2億枚のアルバム・セールスを誇るエルトン・ジョンから見ると、レオンの実力からすれば不遇だったと思えるようだ。ある日、『追憶の日々~ベスト・オブ・レオン・ラッセル』をiPodで聴いていたエルトン・ジョンは、突然、その素晴らしさに涙した。2008年のある日のことだった。エルトン・ジョンはその思いをレオン・ラッセルに伝えるべく、共同制作アルバムを発想する。ふたりは、2010年、『ザ・ユニオン』という優れたアルバムを作り上げた。

オクラホマ州タルサの出身。ハイ・スクール時代のバンド仲間には、後にブレッドで成功するデヴィッド・ゲイツがいた。エリック・クラプトンが敬愛したJ・J・ケイルとスター・ライターズというバンドを組んでいたこともある。1950年代後半、ロサンゼルスに進出し、1960年代半ば頃まで数多くのレコーディングで、アレンジを担当したり、キーボードを弾いた。

ハーブ・アルパートの「テイスト・オブ・ハニー」、ザ・バーズ「ミスター・タンブリンマン」、ゲイリー・ルイス・アンド・ザ・プレイボーイズの「ディス・ダイアモンド・リング」、ザ・ベンチャーズ「十番街の殺人」など参加した大ヒット曲は数多い。フィル・スペクターのレコーディングにも欠かせない一員だった。1968年から’71年にかけては、同じシンガー・ソングライターのマーク・ベノ(この人も素晴らしい)とコンビでアサイラム・クアイアーズの名でアルバムを出したが、ヒットしなかった。だが、その名は徐々に広まり、ジョー・コッカーの音楽監督を務めたマッド・ドッグス&ザ・イングリッシュメン、ジョージ・ハリスンの主催したバングラディシュ・コンサートへの参加、ボブ・ディランの「川の流れを見つめて」や「マスタピース」のプロデュースなどで結実する。

1970年にはイギリス人プロデューサー、デニー・コーデルと共にシェルター・レコードを設立。J・J・ケイル、フィービ・スノウ、ドン・ニックスなどを世に送り出した。

『カーニー』はレオン・ラッセル3作目のアルバムで、もちろんシェルター・レコードから、1972年6月にリリースされた。シェルター・レコードは、名エンジニア、スティーヴ・ホフマンがまとめ上げた素晴らしい良音を生むスタジオを持っていた。スティーヴ・ホフマンは、後にリマスタリング・ブームを先取りしたDCCコンパクト・クラッシックスを設立。イーグルスやビーチ・ボーイズなどのゴールド・ディスク(金蒸着CD)をリリースしてオーディオ・ファンを虜にした。CD盤の『カーニー』は金蒸着盤では無いもののスティーヴ・ホフマンがリマスタリング。良音CDとして知られている。

このアルバムには、どこかうら寂しい情緒があるのだが、ハイレゾ音源は、その情緒をうまくすくいあげている。「タイト・ロープ」の締まったリズム・セクションは、CDでも素晴しいが、余韻でハイレゾが勝る。余韻という点では、雨の音、雨中を走るクルマの音などSEを導入した「マンハッタン・アイランド・セレナーデ(邦題:マンハッタン島のセレナーデ)」がより際立つ。深夜、マンハッタン島で雨とクルマの音を孤独に聴いている情緒が、ハイレゾ音源だと深く表現されている。

レオン・ラッセルのスタンダードのひとつとして知られ、ジョージ・ベンソンのカヴァーで有名な「ディス・マスカレード(邦題:マスカレード)」をハイレゾ音源で聴いていると、アナログLPに近い音色であることが分かる。

この「ディス・マスカレード」や、カーペンターズら多くのアーティストにカバーされた「ア・ソング・フォー・ユー」など、レオン・ラッセルがいかに作曲能力が高かったか分かる。もっと愛されていいシンガー・ソングライターだ。

 

(文/岩田由記夫)

東京生まれ。ピンクタンク代表取締役。音楽、オーディオ評論家、音楽プロデューサー、DJなど。6歳でエルビス・プレスリーの「ハートブレイクホテル」に影響を受ける。1970年になると講談社の記者を経て、週間プレイボーイ、FMレコパル、ミュージックライフなどに執筆。FM&AM局の制作プロデュースやDJ、そしてレコード会社の経営アドバイザーも務める。また1980年代に入るとFM東京、ラジオニッポン、NHKなどでDJとして活躍。さらにCDや映像の製作までこなす多彩ぶり。現在はbayfm「ミュージック・インシュランス」(オンエアー日/毎週日曜日、午後11時00分より)を担当。主な著書に「僕が出会った素晴らしきミュージシャンたち」「フォーク」などがある。

 

 

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