高音質ハイレゾ名盤

2017年9月6日

生きることへの欲求を歌ったメジャー4作目

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ラナ・テ゛ル・レイ UICS-1324 ラスト・フォー・ライフスティーヴィー・ニックスとのアンニュイなデュエットを深夜に聴けば、特有の残響感がたまらない快感。
ラナ・デル・レイ『ラスト・フォー・ライフ』

インディー時代の1作を含めると通算5作目となる。メジャー・デビュー作『ボーン・トゥ・ダイ』で2010年代を代表するシンガー・ソングライターとして認められたラナ・デル・レイだが、ジャケットを見るとこれまでと雰囲気が異なる。彼女のジャケットに於いては定番と言えるオールド・カーをバックにしているが、御本人が笑顔で写っているのだ。

前作の『ハネムーン』はサングラス姿だったが、『ボーン・トゥ・ダイ』、『ウルトラヴァイオレンス』では、カメラをにらむような目線が印象的だった。美女だけに、どこか暗さを感じさせ、それはアルバムの内容、特に歌詞とリンクしていた。これまでと違わないのは、白のファッション。メジャーで発表した4枚は、すべて洋服の色はホワイト。こんなところにも彼女のこだわりが感じられるし、たかだがジャケットのファッションのカラーに何かを連想させるのも、彼女が大物の証拠だろう。

出世作となった『ボーン・トゥ・ダイ』は“死ぬために生まれて来た”ことをイメージさせ、夭折に憧れているのかとさえ思わせた。本作の“LUST FOR LIFE”というタイトルは、“生きることへの欲求”ととれる。イギー・ポップの有名なセカンド・ソロと同タイトルだが、メジャー・デビュー作『ボーン・トゥ・ダイ』への、ラナ・デル・レイ自らのアンサー・ソング集とも受け取れるタイトルだ。

シングル・カットされ、ヒットとなった1曲目の「ラヴ」の詞を読むと、“あなたは未来そのものなのよ”とか、“心配いらないわ、ベイビー”などというフレーズがあって、これまでの彼女の詞と比べるとかなり、肯定的な内容だ。『ボーン・トゥ・ダイ』のタイトル・チューンで、“だってあなたと私は死ぬために生まれたんだもの”とか、“遺言を選んでおいてね、これで最後だから”と歌っていた彼女とは別人のように思える。ちなみに彼女はメジャーで発表した4作、すべてアルバムの中の1曲をアルバム・タイトルに使っているが、この辺もこだわりなのだと思う。

「ラヴ」は、これまでの彼女のサウンドに比べて、オルタナティヴよりポップ寄りだが、それでも踊れるリズムではない。同世代のレディー・ガガが踊ることに特化しているのに対し、彼女は、踊らない、踊れないサウンドをずっと守っている。それは、詞がポジティヴに変化したこの新作でも守られている。もうひとつの特徴は、サウンドが深い音響感を持っていることだが、その点もキープ・コンセプトされている。ダニエル・ラノワのソロ・アルバムなどに通じる音響感で、鳴っている音楽の背後に広がる残響感が、ラナ・デル・レイの音楽の大きな魅力のひとつだ(いつかダニエル・ラノワがプロデュースしないか、個人的に期待している)。

CDもかなりの良音だが、音響感はハイレゾ音源だとより、リアルになる。サウンド全体のエコー感は、ハイレゾ音源の方が深い。彼女と一部、共通した倦怠感をヴォーカルの底に漂わせるフリートウッド・マックのスティーヴィー・ニックスが参加した「ビューティフル・ピープル・ビューティフル・プロブレムズ」を聴いていると、アメリカ西海岸の陽光の裏に秘むアンニュイが伝わってくる。ハイレゾ音源で、ふたりのデュエットを聴くとよりアンニュイ感に浸れる。深夜、ハイレゾ音源をスピーカーで鳴らしていると、闇の奥がどこまで深いのか、分からなくなって、夜を愛する人には、たまらない快感が得られるだろう。

前述のスティーヴィー・ニックスの他、ザ・ウィークエンド、エイサップ・ロッキー、ショーン・オノ・レノン、プレイボイ・カルティなどゲスト陣も多彩だ。プロデュースは本人、長くコンビを組むリック・ノーウェルズ、エンジニアでもあるキエロン・メンジーズが手掛けている。

 

 

(文/岩田由記夫)

東京生まれ。ピンクタンク代表取締役。音楽、オーディオ評論家、音楽プロデューサー、DJなど。6歳でエルビス・プレスリーの「ハートブレイクホテル」に影響を受ける。1970年になると講談社の記者を経て、週間プレイボーイ、FMレコパル、ミュージックライフなどに執筆。FM&AM局の制作プロデュースやDJ、そしてレコード会社の経営アドバイザーも務める。また1980年代に入るとFM東京、ラジオニッポン、NHKなどでDJとして活躍。さらにCDや映像の製作までこなす多彩ぶり。現在はbayfm「ミュージック・インシュランス」(オンエアー日/毎週日曜日、午後11時00分より)を担当。主な著書に「僕が出会った素晴らしきミュージシャンたち」「フォーク」などがある。

 

 

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