高音質ハイレゾ名盤

2017年8月23日

レジェンド2組が世界に届けるラヴ&ピース

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サンタナ&アイズレー『パワー・オブ・ピース』JK

アナログ美音を知りつくした制作陣の意欲が伝わる最先端のサウンド
サンタナ&アイズレー・ブラザーズ『パワー・オブ・ピース』

いまだにハイレゾ音源というものを誤解している方は結構多い。ハイレゾ音源にはいろいろな長所があるが、その最たるものは音が柔らかく、アナログに近付くという点だ。CD音源で足りない情報量を増やす。それによってアナログ再生音に近付くのだ。だからデジタル録音を多用し、MP3ダウンロードを目指した音源は、単にハイレゾ化してもそんなに音質が良くなるわけではない。厳しい表現をするなら、そういった音源は“なんちゃってハイレゾ”なのだ。

プアなヘッドホーンで再生すれば、MP3、CD(WAV)、ハイレゾ音源の差をそう感じられないだろう。ところが、アナログ録音の美点を知りつくしたプロデューサー、エンジニア、ミュージシャンが制作した音源は、ハイレゾ化によって豊潤で柔らかく、温かな音質になる。カルロス・サンタナ自らプロデュース、ジム・レイツェルが録音、カルロス・サンタナと共にミックス・ダウンした本作は、ロックに於けるアナログ美音を知りつくした制作陣の意欲がよく伝わってくる。

CDでもかなり、1960年代のアナログ・センスを感じさせてくれるが、ハイレゾ音源はより一層、温か味が増す。チェンバース・ブラザーズの「アー・ユー・レディ」のカヴァーでは、イントロのラテン・パーカッションの響きが、CDよりハイレゾ音源の方が音場感に優れ、リアルだ。ビリー・ホリデイのカヴァー「ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド」のやや遠くで鳴っているピアノの音の美しさも、ハイレゾ音源がリアルさで勝っている。全体的に1960年代後期のアナログ録音を、当時はなかなか出来なかった美音で聴いているムードを感じられるのが、本作のハイレゾ音源の特徴だ。

2016年のアルバム『サンタナⅣ』で共演したサンタナとロナルド・アイズレーは意気投合し、それぞれがリーダーを務めるバンド、サンタナとアイズレー・ブラザーズでアルバムを共同制作するまでに関係が発展した。テーマは世界に愛と平和を届けること。それが『パワー・オブ・ピース』というタイトルに通じている。

アイズレー・ブラザーズの結成は、60年前の1957年、兄弟バンドだった。ザ・ビートルズもカヴァーした「ツイスト・アンド・シャウト」なども早くからヒットさせた。1960年代半ば頃には、まだ無名だったジミ・ヘンドリックスを最初はローディー、後にツアーやレコーディングで起用している。1969年には「イッツ・ユア・シング」が全米2位の大ヒットなり、グラミー賞を受賞している。

メキシコで生まれたカルロス・サンタナは、後にサンフランシスコに移住する。1969年にサンタナと改名し、ラテン・ロックであっという間に人気となる以前は、サンタナ・ブルース・バンドと名乗っていた。その時代、アイズレー・ブラザーズは彼のアイドルのひとつで、バンドでもライヴで彼らの作品をカヴァーしていた。現在では、ロック・レジェンドのひとりに数えられるカルロス・サンタナだが、無名時代の憧れのひとつがアイズレー・ブラザーズであり、約50年前からこの共演は約束されていたのかも知れない。

全13曲中、5曲目の「アイ・リメンバー」だけが新曲。残り12曲は前述のミュージシャンの他、スティーヴィー・ワンダー、エディ・ケンドリックス、カーティス・メイフィールド、マディ・ウォーターズ、ディオンヌ・ワーウィック、マーヴィン・ゲイなど超有名ミュージシャンの名曲群から、ラヴ&ピースをテーマに選び、カヴァーしている。元々、ソウル・グループの中ではファンク・ロック色の濃かったアイズレー・ブラザーズ。ラテン・ロックからスタートしたサンタナ。この異種のふたつのバンドの相性は抜群に良いのが、聴くとわかる。懐メロでなく、現在のクラブ・シーンにも合った最先端のサウンドと言える。

 

(文/岩田由記夫)

東京生まれ。ピンクタンク代表取締役。音楽、オーディオ評論家、音楽プロデューサー、DJなど。6歳でエルビス・プレスリーの「ハートブレイクホテル」に影響を受ける。1970年になると講談社の記者を経て、週間プレイボーイ、FMレコパル、ミュージックライフなどに執筆。FM&AM局の制作プロデュースやDJ、そしてレコード会社の経営アドバイザーも務める。また1980年代に入るとFM東京、ラジオニッポン、NHKなどでDJとして活躍。さらにCDや映像の製作までこなす多彩ぶり。現在はbayfm「ミュージック・インシュランス」(オンエアー日/毎週日曜日、午後11時00分より)を担当。主な著書に「僕が出会った素晴らしきミュージシャンたち」「フォーク」などがある。

 

 

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