高音質ハイレゾ名盤

2017年7月26日

冒頭のドラムだけでもハイレゾの価値あり!

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スピーカー&大音量で聴きたい、あえて8チャンネルで録音したこだわりのアナログサウンド
R.E.M.『ニュー・アドヴェンチャーズ・イン・ハイ・ファイ』

1980年春、ジョージア州アーセンズ。昼は中古レコード店で働き、夜はジョージア大学に通っていたピーター・バック(ギター)は、友人だったマイケル・スタイプ(ヴォーカル)を誘い、マイク・ミルズ(ベース)、ビル・ベリー(ドラムス)を加えて、R.E.M.(正式名称は、Rapid Eye Movement)を結成した。プロ志向というよりは趣味で始めたバンドだった。

しかし、天は彼らに類稀な才能を与えていた。地元周辺でライヴを重ねる中で生まれた「レディオ・フリー・ヨーロッパ」をローカル・インディー・レーベルから発表したところ、このシングルは、ニューヨークのロック・マガジン“Together Press”の1982年度USA・アンダー・グラウンド・ベスト10シングルに選ばれ、ニューヨーク・タイムズ紙のベスト・シングル・リストにも選出された。

1982年春、メジャーへ配給権を持つIRSレコードと契約。5曲入りミニ・アルバム『クロニック・タウン』を発表後、1983年春にデビュー・アルバム『マーマー』をリリース。いきなり全米アルバム・チャートでトップ40入りを果たした。彼らを支えたのは学生で、当時の音楽シーンではカレッジ・チャート(CMJ)がロック音楽の売り上げに大きく影響を与えていた。まだオルタナティヴ・ロックという言葉は一般的でなかったが、R.E.M.はその先頭を走ったバンドとなった。

アルバムを出す毎に一般での人気も高まり、1988年春にはメジャーのワーナー・ブラザーズと契約金600万ドルで契約する。ワーナーへ移籍してもその音楽スタイルは変わらず、メッセージ色の濃い歌詞と彼らならではの独自のオルタナティヴ・ロック・サウンドを守った。1980年代~1990年代はまさにR.E.M.の時代で、その政治的な主張は、リベラル派に支持され、大統領選挙にさえ影響を与えると言われた。

超名作としては、『グリーン』(1988年)、『アウト・オブ・タイム』(1991年)、『オートマチック・フォー・ザ・ピープル』(1992年)などが知られるが、1996年の本作は、歌詞、演奏だけでなく、レコーディング面でもオルタナティヴ的良音を築いた彼ららしい、音にこだわった作品だ。

それは、“ハイ・ファイに於ける新しい冒険”というタイトルからもうかがえる。1996年頃と言うとデジタル録音(ハードディスク録音)が盛んになり、アナログ・レコーディングをするなら48チャンネルくらいが当たり前だった。本作でR.E.M.はあえて8チャンネルのレコーダーを使用している。年代で言うと1960年代末から1970年代初期の主流だったレコーダーだ。それが“ハイ・ファイに於ける新しい冒険”だったのだ。出来上がった本作は、ロック・サウンド及びレコーディングの原点回帰を示す素晴らしい音質に仕上がっている。

特に「ハウ・ザ・ウェスト・ワズ・ウォン・アンド・ホウェア・イット・ガット・アス」のオープニングのドラムスの音は、長いロック史の中でも最良の録音のひとつと僕は思っている。数多くのオーディオ機器試聴で必ずこの曲のドラムを用いてきた。このドラムスの音がリアルに鳴るスピーカーはロック向きだし、残念ながらよく鳴らないスピーカーやシステムをロック・ファンには奨めない。

ハイレゾ音源でこの音を聴くと、よりアナログ録音らしい音色で鳴る。CD以上に響きの音色の素晴らしさが伝わる。アナログ録音でしか出せない音色が、ハイレゾ音源だと、より明確になる。この曲1曲、それもドラムスの音を聴くためにハイレゾ音源を入手する価値がある。もちろん、他の曲もすべて素晴らしく、例えば、マイケル・スタイプが自分の人生を変えたというパティ・スミスが参加した「E-ボウ・ザ・レター」の彼女のヴォーカルの存在感もハイレゾ音源の聴きどころだ。再生はヘッドホーンでなくスピーカー、それも大音量で。そういう風に作られたサウンドだ。

 

 

(文/岩田由記夫)

東京生まれ。ピンクタンク代表取締役。音楽、オーディオ評論家、音楽プロデューサー、DJなど。6歳でエルビス・プレスリーの「ハートブレイクホテル」に影響を受ける。1970年になると講談社の記者を経て、週間プレイボーイ、FMレコパル、ミュージックライフなどに執筆。FM&AM局の制作プロデュースやDJ、そしてレコード会社の経営アドバイザーも務める。また1980年代に入るとFM東京、ラジオニッポン、NHKなどでDJとして活躍。さらにCDや映像の製作までこなす多彩ぶり。現在はbayfm「ミュージック・インシュランス」(オンエアー日/毎週日曜日、午後11時00分より)を担当。主な著書に「僕が出会った素晴らしきミュージシャンたち」「フォーク」などがある。

 

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